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【王子教室】 思考力について

2022年4月15日

こんにちは。王子教室の重松です。

 

センター試験が共通テストに変わり、思考力の重視が叫ばれていますが、そもそも思考力とは何かについて考えてみたいと思います。

 

①論理的思考能力

 

②創造的思考能力

 

①については従来のセンター試験でも、大学ごとの個別入試でも実は昔から問われ続けています。生まれつき才能があり自覚がないまま入試を終える人も多いのですが、意識して取り組めば現代文の学習等で鍛えることもできます。

 

「知識偏重の詰め込み教育」とよく批判されますが、東京大学の入試もセンター試験も要求しているのは「基本的な知識」と「常識的なレベルの論理的思考能力」だけです。「高度な論理的思考能力」を問わない理由は「できる人が少ないから」だと思います。

 

マーク式の試験であっても論理的思考能力は問うことができます。慶應大学の英語は知識で解こうとすると難しいのですが、論理で解くと簡単になるように作られています(それでも知識でゴリ押そうとする人はいますが)。

 

②については経済界からの要望が強いのだと思いますが、教育で鍛えることも入試で公平に評価することもほぼ不可能だと思います。どのレベルの創造性かにもよりますが、低いレベルであれば①の延長線上にあるでしょうし(いわゆる「カイゼン」)、一発のアイデアで大金を生み出す高いレベルの創造性をもった人であればそもそも大学や企業に入る必要性を感じないかもしれません。

 

従来型の入試を批判する際に欧米の大学を持ち出す人がいますが、どうも幻想を抱きすぎのように感じます。オックスフォードやケンブリッジのイギリス人学生がほとんど貴族階級なのは有名ですが、フランスのグランゼコールは日本以上にエリート主義的ですし、アメリカのテンスクールの学費を見れば普通の家庭はゾッとすると思います。簡単に対比を作れば欧米型は貴族的でアジア型は公平です。ペーパーテストを嫌う気持ちはわからなくもないですが、生まれによって左右される階級社会に近づくことが広く日本人に受け入れられるとはあまり思えません。

 

「なぜ日本にはGAFAのような企業が誕生しないか」といった問いかけもよく見ますが、アメリカが覇権国家で英語が世界共通語だからに決まっています。楽天がAmazonに、ニコニコ動画がYouTubeに、LINEがFacebookに初発のアイデアの質で負けていたとは思えません。決定的な違いは「規模の経済」でしょう。

 

話がそれましたが、結論として

 

①の論理的思考力は昔からそれなりに問われており、それ以上に要求すると単純に答えられる人口が減る

 

②の創造的思考力は制度的に狙って生み出せるか疑問。「生きる力」「人間力」くらいまで緩めたとしても公平性は犠牲になる。

 

となり、思考力重視を叫ぶ人が何をどうしたいのかが理解できません。

 

現に今年の共通テスト数学は東大生の中で解ける人と解けない人が分かれるような難易度設定になっており、全学力層が受ける試験としては崩壊していました。今まで適度なバランスで思考力を問うていたのに、「もっと思考力を問え!」と無茶な要求を受けたことに対する出題者側からの「逆ギレ」のようにも見えます。

 

「知識偏重」をどうにかしたいのであれば手をつけるべきはセンター試験ではなく私立大学の入試問題でしょう。世間一般の「重箱の隅をつつくような瑣末な知識の暗記をさせられた」というイメージのほとんどは私立大の英語や歴史の問題から来ていると思います。ただし、私立はどのような出題をしようが自由なので国が強制的に変えることはできません。私立大側にも事情があり、作問コストと採点コストがかからないマーク式の知識問題を出し、たくさんの受験生に複数の日程で受けてもらうことで受験料を稼いでいます。このコストの問題、お金の問題をどうにかしないと「知識偏重」の出題はなかなか変えにくいでしょう。

 

そのお金を国が出せばと思うのですが、共通テストの記述の採点や英語4技能試験の民間委託を見ればわかる通り、国はお金を出したくないのです。お金をなるべく出さずに思考力を上げたいと思っています。

 

課題を発見し、その合理的解決方法を考えるのが思考力ですが、今回の入試改革騒動はその点がどうもチグハグな「願望思考」「ないものねだり」になっているように感じます。思考力のない大人に思考力を要求される子どもたちがかわいそうです。